YSKだより
象の牙
2016.03.07
拙宅の玄関脇に木彫の象の像がいる。身長900ミリ、背高750ミリ、子どもたちが背中に乗ってバランスがよい。時々、子ども連れのお母さんが子どもを載せている情景を見る。
10年前、医療施設と老人ホームの複合施設の設計監理に従事したが、そのクライアントの父君がタイ国を訪問された際に日本に連れてきた象だ。建設工事の着手時に解体する物置にいたのを見つけ、連れて行ってかわいがってくれと言われ、飼い主が私になった。
この2年間、足腰に支障をきたし、自分のことばかりを考え、この象のことを気にかけなかった。
まだ寒さが繰り返す2月の朝、日課として始めたごみ出し、その帰りに、象の異変に気が付いた。左の牙が無い。周囲を探したが、落ちていない、見つからない。何時頃から牙が抜けたのか、全く記憶に無い。
牙の片方が抜けた象、正に今の私のようだ、そう考えると不自然でなければ、むしろ穏やかな風で愛くるしい限りだ。
そういえば、この象の左後ろ足には当初から斜めに切り込まれた傷がある。私の支障がでたのは右足だが、そこまでいい加減な飼い主に似るのか、飼い主が似るのか。
一生の相棒である。
”象”ならぬ ㈱像建築設計事務所 臼井洋司